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我思う故に・・・新館

人造人間編の闇 〜16号の正体〜

2022/12/01
 




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本当に何を今さらというような話なのだが、今回はドラゴンボールのおはなし。

この記事は、旧ブログで2008年に書いたものを、画像を大きいものに差し替え、文章をより理解しやすくするべくリライトしてみた。古い記事だが、僕の基本的な考えは今も変わっていないので、この考えを今一度世に広めたいと思い再掲載する。

ちなみに本記事で扱う「ドラゴンボール」とは無印の漫画作品「ドラゴンボール」のみを指し、アニメはもちろん、後に作られることになる続編作品やゲームなどは、そもそもの創作意図などが一貫していなさそうなので一切評価に含まないものとする。
まぁ「GT」以降の派生作品も「改」「超」も、劇場版もぶっちゃけ僕はまるで観てないしな。

〜〜〜〜

古来、アンケート至上主義といわれる少年ジャンプ誌上において、アンケート結果という明確な指標に基づき、作家諸氏は読者の人気を得るためにあらゆる手段を講じてきた。

自分が描きたいように描いて人気が出ればいいが、読者の理解を得られずに短命に終わる作品も数多く、打ち切りの憂き目を見ないように、ときに読者の好みに迎合してみたり、担当編集者に意見を求めたりした結果、極端な路線変更を余儀なくされた作品も少なくないと聞く。

ギャグマンガとしてはじまったドラゴンボールが、少年ジャンプをリードする人気作となったのは「天下一武道会編」に突入してからだったそうで、前作「Dr.スランプ」で一世を風靡した鳥山明であっても、ドラゴンボールの人気は、当初今ひとつ伸び悩んでいたそうだ。
鳥山明の場合、弱り果てて相談したというわけではないようだが、デビュー前から鳥山をバックアップし、後にジャンプの「伝説の編集者」と呼ばれることになる鳥嶋和彦氏からのアドバイスを得て路線を変更したのだという。
もともと中国拳法を題材にしていたとはいえ、今思えば、テコ入れでバトル漫画に移行して人気が出た作品の先駆けといえるのかもしれない。

鳥山明は、当初「ドラゴンボール」を単行本何十巻にも亘る長編にするつもりなどなかったため、この先どうするか、どんな敵をどんな思いでどう倒すかなど、長いスパンでのビジョンが明確ではなく、


サイヤ人襲来以降のシリーズでは、強さを数値化してしまったおかげで戦闘力のインフレに歯止めが効かなくなってしまい、デタラメに強い敵が現れたら、常識はずれの方法でパワーアップした悟空(もしくはベジータ・ピッコロ)がそれを圧倒し、更に一段階変身した敵をも誰かがさらに上回り・・・という後出しジャンケンの繰り返しで、どうにも場当たり的な印象が拭えない。(それでも面白いんだが)

まぁ細かい矛盾は捜せばいくらでも出てくる有様なのだが、しかし、別にそこをつつくつもりはないのだ。

ただ前述したように、作品の進む先を担当編集者の意見に大きく影響されていたドラゴンボール。だが、一区切りついた次のシリーズの新展開ではなくて、シリーズ途中での明らかな路線変更の跡がまざまざと残っているケースがある。

それが「人造人間編」だ。(ちなみに人造人間編の担当編集は鳥嶋氏ではない。

ナメック星で伝説の超サイヤ人となり、悟空がフリーザを倒して2年ほどが過ぎた頃、復活したフリーザが父親コルド大王を伴い復讐のために地球へやって来た。
だが、突然現れた「未来からやって来た少年」トランクスが、超サイヤ人となってフリーザたちを瞬殺、次いで3年後に現れるふたりの人造人間への注意喚起をして未来へと帰った。

3年後、トランクスの予言どおりに人造人間を迎え撃った悟空たちだったが、現れた人造人間19号と20号は、トランクスがいた未来世界で猛威をふるったやつらではなかった。

その後、ベジータとピッコロの予想外の強さに途方に暮れた20号(ドクター・ゲロ)は、打開策として自分よりも強い17号と18号を目覚めさせ、失敗作だという16号も起動してしまった。
加えて、トランクスよりもさらに先の未来からやって来た人造人間セルが、次々に形態を進化させ強くなっていく・・・。

と、これらがすべてシリーズ最初から計算されていたなら素晴らしいことだが、後に明らかになった情報では、担当編集者の意見でラスボスを次々と変更した結果だというのだ。

その中で僕が目をつけたのは、16号だ。


それでは、まず16号というキャラクターを見てみよう。
「無」から造られた完全機械タイプの人造人間で、悟空を倒すためだけに存在するという以外すべてが謎。

しかし、存在意義であるはずの悟空と絡むこともほとんどないまま、16号はセルに破壊されてしまう。


16号の言葉と死(破壊)は、悟飯の秘められた真の実力を引き出すきっかけこそ作ったものの、そのために登場させられたとは考えられない。その役目はより効果的な人物が他に何人もいるからだ。

悟飯がもっとも心を許しているピッコロやクリリンはこれまでに死ぬイベントを何度か経験しているから作品的にインパクトに欠けるとはいえ、彼らにとって代われるほど、16号が悟飯と深い絆で結ばれたり、16号の行いに感銘を受けたりしたようなこともなく、16号の言葉が悟飯覚醒のトリガーになるというのは、かなり強引な印象がある。


ところで、
19号と20号は、シリーズ開始当初には間違いなくラスボスの予定だった。


これはトランクスがはじめてやって来たときに「19号・20号」と言葉にしているので間違いない。


ところが、その後ふたたびやって来たトランクスは19号を知らず、トランクスの時代で暴れたのも17号と18号だったことに、いつの間にか変更されていた。
これは、編集者から19号と20号が「デブとジジイで子供受けが良くないから」とラスボス指定を外されたため、17号と18号が新たに設定されたからだ。その際、トランクスが知る未来と歴史が変わってしまっていることのひとつの要素として、トランクスも見たことがない16号が登場した。

だが、17号18号も担当編集者には「子供じゃん」と評判が悪かったためセルという新キャラが作られ、しかしその虫みたいな容姿が気持ち悪い → 第二形態はバカっぽい → ってことで、スマートな完全体が設定されるに至ったとのことだ。紆余曲折にもほどがある。

物語の展開の骨子であるラスボスがそれだけ定まらなければ、オミットされた小ネタやプロットもあっただろう。

最初に現れた19号と20号。当初、鳥山明は彼らをメインの敵として登場させたが、前述の通り降格を余儀なくされたことは、まず間違いない。


次に新たに強敵として設定された「無垢なる邪悪」17号と18号。ふたり登場させたのはトランクスのいた未来との齟齬を少なくするためだと思われるが、同時に、ふたりとは身体の作りも行動原理もまるで異なる「謎の存在」が設定された。それが16号だ。

物静かだが実はもっとも恐ろしい能力を秘めており、悟空に何らかの因縁がある。
単にシーソーゲームの「強い者比べ」をするのではなく、謎解き要素が含まれた新しい展開が繰り広げられるはずだったと考えられる。

しかし、セルの登場・進化そして16号の破壊によって、その謎は解き明かされることなくシリーズを終えてしまったのである。

結果として、16号は作者がどのような意図をもって登場させたキャラだったのか極めて不明瞭になってしまった。
だが、ラスボスのつもりはなかったにせよ、16号が明確な役割を持って生み出されたキャラクターでなかったとしたら、そもそも登場した意味自体が怪しくなってしまう。

この明らかな方向変換の煽りを受け、お蔵入りしてしまったと考えられる「謎の存在」16号の正体とは何だろうか。

思い出してもらいたい・・・

・無口、無表情
・自然や動物が好き、悪いことが嫌い
・体の中に爆弾

これらの特徴をもち、16号と同じくレッドリボン軍に作られた人造人間が以前にもいたな。


そう。「ハッチャン」こと、人造人間8号だ。


僕は、企画当初の16号は、義体を極限まで強化し、システムを初期化・リブートされたハッチャンだったと考えている。


16号は、17号・18号を凌駕する能力を持ちながら、自然を愛し無益な殺生を好まない。


「悟空を殺す」という物騒な最終目的だけは揺るがないが、それとて、生存目的・存在理由として外因的に植え付けられた「プログラム」でしかなく、「そうしたい」という自らの感情があるわけではない。


悟空と友だちだったあの心優しいハッチャンが、無機質で感情を持たない「悟空絶対殺すマン」として戻ってきた。初期化されてしまったプログラムに、ハッチャンの記憶や感情は蘇るのか・・・?

という、懐かしくも切なく悲しい展開が想定されていたのではないかと、妄想して止まないのである。



物語終盤には、元気玉に協力するその他大勢としてハッチャンが再登場しているが、今回の話はあくまで「使われなかった設定」の話なので、僕の妄想を否定する根拠とはなり得ない。

実は連載当時から僕はこの仮説を友人に熱弁していたのだが、誰ひとり相手にしてくれず悲しい思いをしていたのだ。
ToHeartのマルチルート(懐かしいw)よりも6年も前に、こういうプロットを考えていた(妄想です)鳥山先生に最大限の敬意を表しつつ、
しかし、初登場の時点で16号の正体は「ハッチャン」だったに違いないと、僕は今でも確信しているのだ。

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Comment

  1. 匿名 より:

    8の2倍が16 ですし、普通にありそうです…!

  2. 匿名 より:

    いい考察じゃないですか!

    • BIE(管理人) より:

      ありがとうございます!
      今さら真実がどうとか言ってもしようのないことだとは思いますが、
      こういう妄想をすることが、僕には至上の愉しみなのです。

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